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歌野晶午『密室殺人ゲーム2.0』

<頭狂人><044APD><ザンギャ君><伴道全教授><aXe>。
奇妙なニックネームの5人が今日もまた、Webチャットの前に集い話に花を咲かせている。
彼らがチャットで行っているのは「殺人推理ゲーム」。
推理ゲームといっても、各々が考えた机上のミステリーを披露し合うだけのお遊びではない。
彼らは、メンバーの一人が実際に殺人を実行しリアルに起きた殺人について残りのメンバーが推理をするというリアル殺人ゲームを行っているのだ。
究極の推理ゲームの果てに待つ、衝撃の結末とは一体・・・。


さて今日は歌野晶午氏の『密室殺人ゲーム2.0』を紹介したいと思います。
ですが、まず先に言っておかなければいけないのですが本書は『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の続編となっています。
『2・0』の方が「このミステリーが面白い2010」で紹介されていたので興味を持ち読もうと思い立ったのですが、どうせならシリーズの最初から読もうと『王手飛車取り』も一緒に買い求めました。
今夜はこの2冊まとめての紹介となります。

まず本書を読み始めて驚くのがその特異な設定。
彼らは自らが考え出した殺人計画を、自らの手で実際に実行してみて他のメンバーにその殺人に関する何かしらを出題します。
例えば、現場が密室になっていたなら「犯人はどうやって密室を脱出したのか?」。
首を切断された死体、「犯人はなぜ、首を切断する必要があったのか?」。
等など、いわゆる『本格』と呼ばれるジャンルのミステリーならお馴染みの設定です。
小説上ではよくある手口だが、実際の殺人ではまずお目にかかることはないであろうというそういった手口をあえて実際にやってみて、かつそれらをああでもないこうでもないと推理し合うのが至高の遊び・・・なんだそうだ。

まぁ狂ってる設定ですね。
そしてこんなもん現実ではありえない設定だろ!・・・と言いたいところですが、おかしな事件が多々起こっている昨今の日本じゃ、ひょっとしてありえるかもしれんな~とか思ってしまえるのが恐いところです。
自分も趣味でネットゲームをやっていますが、これもお互いの氏素性を知らない人間が集って一つのゲームをプレイしているわけです。
彼らとの違いは、やってることが殺人かゲームかってだけしかないわけで、本質的には似たようなものなんじゃねえか?とか考えてしまいます。
いや違うか?違う違う!違うってことにしておきたい。

設定そのものは非常にダークなのですが、内容は非常にライトな感じのテイストで進行します。
5人の軽妙な掛け合いで和やかに話は進みます。
まぁ、殺人鬼とその仲間たちがキャッキャ言いながら談笑し合ってるんですよ。
この不思議な世界観がなんだか薄ら寒さを覚えるのですが、この不釣合いさの均衡というべきものが本書の最大の魅力となっています。

先に書いたとおり、一作目となる『密室殺人ゲーム王手飛車取り』から読み始めたのですが、これ・・・はっきり言って面白かったです。
特に<頭狂人>が出題者(殺人実行者)となった「Q7 密室でなく、アリバイでもなく」という話は心の底から感嘆した。
なるほど、これはよく出来た話だな~とそのオチにマスターベーションいやスタンディングオベーションですよ。

・・・ですが。

その続きの話「Q? 誰が彼女を殺しますか?救えますか?」が激しく蛇足だなと。
要らんやろこの話!と。
そしてこの話が一冊目『王手飛車取り』の最終話でした。

そのまま二冊目の『2.0』を読み始めたのですが、ここである違和感を感じます。
これは二冊を続けて読んだ人なら十中八九、いや感じないとおかしいだろ!というほどの絶対的な違和感です。
まぁその違和感の正体は後々明らかになるのでいいんですが、続編に当たるこの『2・0』の方は、一冊丸ごと蛇足でしたね。
要らんやろこの本!
作者の言葉を借りると、「少しずらした続編を書きたかった」とのことですが、意味は分かるけど二番煎じ・・・いや同じ作者の作品だから二番煎じとは言わないのか?なんかまぁとりあえず言いたいのは、お前これ内容一緒やないか!
そうなんですよ一作目とほぼ同じような内容の構成となっていました。
多分これはあえてそういう風に書いてるんでしょうけどね、でも正直いまいちだったw
絶賛されてたのはこっちの続編の方だったけど、まさかこっちがうんこだったとは!

本日の締め。
歌野晶午『密室殺人ゲーム2.0』_b0083757_0371815.jpg読むなら是非、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の方から読んでみてください。
余りに特異なその設定に若干引いてしまいますが、内容は中々よく出来た話だと思います。
ちなみにタイトルに「王手飛車取り」と入っていますが、将棋はまったく関係ないです。
文中で登場人物の誰かが「本格ミステリーにおいて、密室とアリバイ崩しは将棋でいう飛車と角のようなものだ」とか言ってたような気がします。
内容でよく密室が扱われているので、その密室にかけて飛車取りというタイトルになっているんじゃないでしょうかね~。

歌野晶午『密室殺人ゲーム2.0』_b0083757_040434.jpg続けて『密室殺人ゲーム2.0』を読むとある大きな驚きに出会うことが出来ると思います。
その驚きを知るために2冊続けて読むのも一興だと思います。
ただ、個人的には二冊目はいまいちだったとお伝えしておきます!
面倒だったら一冊目だけでも構わないかなってのが正直なところですね。

さて、この歌野晶午って人の作品は今ままでもいくつか読んで割りかし付き合いも長いんですが、もう二作ほど興味がある作品を見つけたんでまた読んでみたいと思います。
ただこの人の本は当たりハズレが激しすぎるのが困りもの。
次に読むのも、せめて本書くらいの水準の作品であることを願って・・・次回に続く。
by kannei0521 | 2010-02-12 23:59 | 読書日記