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歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

今宵はまた読書感想日記です。
前回に引き続き、歌野晶午氏の小説です。
ただ前回とは大きく違うのは、今日紹介する作品はかなり有名な作品らしいですね~。
俺は知らんかったけどな!


自称「何でもやってやろう屋」の元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法を行っている組織の内偵調査を依頼される。
そんな折、電車への飛び込み自殺を図った麻宮さくらを救う。
これは成瀬が夢に見た、運命の出会いってやつなのだろうか!?
依頼された事件を追ううちに成瀬が着き止めたその真相とは・・・。


今回は軽く短めにまとめて紹介したいと思います。
いや手抜きじゃねえんですよ、この作品の性質上多くは語れないんですよ。

まず読む前に、どんな作品なのか知ろうとamazon辺りを見ると書かれている、既続の方たちの書評に目を通してみました。
そこに書かれていた意見は概ね2通り。

①すごく面白かった、最後のどんでん返しにはびっくりした。
②すごくつまらなかった、最後のどんでん返しにはびっくりした。

そう、面白かった面白くなかったと意見は真っ二つに分かれているものの、最後に何か驚く仕掛けがあってそれには驚かされたっていういうところでは一致しているようだった。
さらには、「騙された」という書き方をしている人も多数いたので、どうやらこの作品は叙述トリック物だなということにも気づくわけですよ。
叙述トリックってなに?て人はググッてみてください。
要は、作者が読者を騙すために直接仕掛けてくる罠ですね。

さてこうして俺は事前に二つの情報を手に入れたわけです。
①この作品は叙述トリック物である
②最後に何かしらのどんでん返しがある
これだけの心構えをして、騙されてはなるものか!と慎重に読み進めたわけです。
・・・
うん、思いっきり騙された!!

いやもうホントにこれは読めんかった。
多くの方が書評にも書いていましたが、面白い面白くないは別として、騙すための作品としてはこの「葉桜の季節に君を想うということ」はまさに一級品だと思います。
初見ではこれは中々看破できねえですわ・・・。

全てのオチを知った上で今一度、最初から読み返してみるとすでに一ページ目から作者は罠を張り巡らしていることに気づきます。
特に始まって約10ページ目くらいでしょうか。
文庫版でいうと20ページ目くらいになりますが、ここで書かれているある一行で、「ある思い込みをさせられ完全に作者の術中に落ちていました」。
そうです、始まってすぐにもう作者の思う壺にどっぷりとはまってしまいました。
悔しい!でも感じちゃう・・・ビクンビクン

この物語は、現在と過去、かつて成瀬が探偵事務所で働いていた頃の話。
さらには全く関係なさそうな登場人物の話などなどが入れ替わりながら進行していきます。
これは一体なんの関係がある話なんだ?と訝しがりながら進んでいくのですがそれらが終盤になって見事に一本道に繋がっていきます。

いや~人間の思い込みって恐いですね。
この作品を汚い!くだらない!と酷評している人もかなりの数いますが、個人的には割りと嫌いじゃなかったです。
確かに汚いというか、これは無いわっていう風な書き方がされている箇所も無いことはないです。
でもミステリーの楽しみ方は個人それぞれなんでしょうけど、俺はがっつりと完全に騙される方が好きなんで、そういう点では楽しめた作品でした。

歌野晶午氏の作品は色々と読みましたが、この「葉桜の~」は非常に読みやすい文体で書かれているので、読書を敬遠しがちの方でもすんなり読めてしまうかと思います。
叙述トリックに余り触れたことの無い方、もしくは俺は騙されねえぞ!と思っている方。
そういう方には是非、一度読んでみてもらいたい作品ですね。
歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』_b0083757_23582321.jpg

今になって思えば、タイトルからしてすでに作者の罠は始まっていたんだよ・・・。
そう考えたら、これはかなり考え込まれた作品ですなぁ~歌野恐るべし。
by kannei0521 | 2010-02-21 23:21 | 読書日記