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荻原浩『噂』

「レインマンが出没して、女の子の足首を切っちゃうんだ」
「でもね、ミリエルをつけてると狙わないんだって」
渋谷を中心とした地域の女子高生の間で広まっている噂。
これは、香水の新ブランドを売り出すため、モニターとして集められた彼女たちが口コミを利用し故意に広めた噂だった。
この販売戦略は成功し、噂は都市伝説化。それに伴い香水は大ヒットする。
だが、噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された・・・。
殺人鬼「レインマン」の正体とは一体!?
最後の一行まで気を抜いてはいけない!
衝撃の結末を迎えるサイコサスペンス。

久しぶり、ものすげー超絶久しぶりに読書しました。
ネット知り合いの某ジンジン君から勧めてもらった本書『噂』。
すぐに読むねー^^って小気味いい返事をしておいたのがかれこれ3ヶ月ほど前。
その後、言葉どおりに読むのかと思いきやまったく読まなかった。
ごめん、ジン君ごめん。許してこんな僕を許して。
そう思いながらすっかりこの本のことなんて忘れて生きてました。
放置プレイに突乳していたのですが、ここにきて突然読書癖復活。
お陰様でようやくこのたび読破に至りました。有難うございます。

この物語の発端は、新しい香水ブランド「ミリエル」を売り出そうと、そのミリエルの宣伝を請け負った広告代理店コムサイト社が、新たな販売戦略として人間の口コミを利用して噂を広めるといった手法をとったことに始まります。
モニターとして集められた渋谷の女子高生たちに、ある噂を真実のようにいって聞かせます。
その噂とは、上記のように、

殺人鬼レインマンが出没し女の子の足首を切って持っていってしまう。
でもミリエルをつけている女の子だけは狙われない。

という、女子高生の恐怖心を煽るもの。
この噂は瞬く間に渋谷を中心とした地域に広まり、女子高生を中心とした10代の女の子なら知ってて当たり前の噂、言わば都市伝説と化す。
噂が蔓延した頃、一つの殺人事件が発生。
被害者となった女子高生の遺体は・・・噂と同じように足首が切り取られていた。

この事件を追うことになった目黒署の刑事・小暮。
妻に先立たれ、被害者と同じ年代の娘をもつ男やもめの熱血漢。
そして相方となった本庁からやってきた女性刑事。
彼女は、階級こそ小暮より一つ上ですが、殺人事件の捜査に参加するのは今回が初めてという新人も同然の状態。
とんでもない奴と組まされたもんだ・・・。
最初は不快感をあらわにしていた小暮だが、捜査を進めていくうちにお互の才能を認め合うような良きパートナーになっていく。
彼女もまた旦那を早くに亡くし、一人身で小さな息子を育てているという似たような境遇が惹き合ったのかもしれない。

基本的に物語は主人公である小暮刑事の目線で進んでいきます。
捜査が進むにつれ、捜査本部の方針と自分が信じて進む道とのずれを感じるようになる小暮。
独自捜査を進めるのだが、警察社会という組織の壁にそれすら拒まれてしまう。
そしてそんな捜査本部をあざ笑うかのように次々と被害者が増えていく。
混乱する捜査に一度は心も折れかけた小暮だが、相棒の女刑事に支えられ再び己を信じ、真実に近づいていく。
この小暮刑事と上司なのに頼りないという相棒の女性刑事の人間描写が実に巧みで小気味良く楽しめました。

本編は終盤で、殺人鬼「レインマン」の正体も、もちろん明らかになります。
でも、犯人が誰か分かっても∥ヘ(′ェ`)ゝ__」ふぅぅんってなもんです。
本当のクライマックス、見所は別のところにあるのです。

文庫本の帯に「最後の一行に瞠目せよ!」との文字が躍っております。
そう、物語の本当の衝撃は最後の一文を読んだ時にやってきます。
犯人が見つかって円満解決したと思ったら実は・・・( ゚д゚ )

ですが、ここで悲しいお知らせをしなければいけません。
小説って最後に、別の作家さんが解説を書いてるじゃないですか。
僕はこの解説を先に読む派なんですよね。
今回も解説を読もうと思ってパラパラとめくってたらね・・・最後の一文を先に見ちゃった( ゚д゚ )
いやまぁ、未読の段階で最後の一文を見たところで意味は分からないと思うんで大丈夫なんですよ。
でも、読み進めていくうちにだんだんその言葉の意味が理解でき始め・・・オチが分かってしまった^^;;;;;;;;;;;
忘れなきゃ!最後の一文を忘れなきゃ!!
って思ってたほうが案外しっかりがっつり脳裏に焼きついているもんでしてね、思いっきり最後のオチが想像できた、そして想像通りのオチだった。
これは申し訳ないことをしてしまった。
僕は最後の瞠目しなければいけない一文を先にチラッと見てしまったので面白さ半減でしたが、これを見ずに素直に頭から読み進めていけば衝撃の結末が襲ってくると思います。
これから読む人は最期を見ちゃダメだよ!!!!1

さてまとめです。
荻原浩氏の小説は始めて読みましたが、実に読みやすい文体です。
これは非常に好感触でした。
僕がよく読む小説家、東野圭吾・綾辻行人・有栖川有栖・折原一の4人。
この中で東野さんは非常に読みやすくお茶漬け感覚でさらさらっと読めるのですが、残る3人の問題児。
こいつらの文はね、お世辞にも読みやすいとはいえない!
非常に癖の強い文体なんです。
この3人に比べたら荻原浩氏の文はさらさらっと読めました。

本書『噂』は良い意味でも悪い意味でも普通のミステリーです。
ですが逆に言えば、だからこそ読みやすくとっつきやすい内容になっているとも言えます。
ミステリーを読んでみたいけど小難しいのはちょっと・・・って方にはもってこいかもしれませんね。
また機会があれば荻原氏の別の作品も読んでみたいと思います。
by kannei0521 | 2007-03-22 20:15 | 読書日記